言葉を絵にする画家
西荻窪の GALLERY FACE TO FACE で竹渕愛留萌さんの個展が開かれている。
この人は、小説の言葉の隙間を埋めるように評論する私と同じ手法で絵を描いている。
言葉は有限だが、世界に事物は無限にあり、その一つひとつが異なる。だから、言葉では、あるひとつの事物や感情を言い当てることはできない。多和田葉子は、言葉を「穴あきチーズ」にたとえている。小説家が書いた言葉の穴を埋めるのが評論である。
竹渕愛留萌さんは、まず、湧き上がるイメージを言葉で書き留める。絵の写真の下にある題名と短い言葉がそれらしい。そして、言葉で言い得ないもの、つまり、言葉からはみ出すものを絵にする。
竹渕さんの作画の方法を聞き、私と同じ思いで芸術に取り組んでいることを知った。
そして、下の2枚の絵に着目した。
『そっと紛れて』には、私が『言葉が見る夢』の諏訪哲史論で書いたこと、つまり、自分だけの一回限りの生を生きることの可能性と不可能性が、『なかったことに』には、同書の多和田葉子論に書いたこと、つまり、他者と自我が溶け合うことの可能性と不可能性が、絵画で表現されている。
展覧会は明日まで。ほかにも多くのすぐれた作品がある。
私も1枚買った。下の2枚のうちどちらを買ったのかは書かないでおこう。


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